「安かろう悪かろう」はもう古い?CAMのプロがAutodesk Fusionを選ぶ理由
ハイエンドとミドルの賢い使い分けと一人一本のFusion環境がもたらした変革
「Autodesk Fusion(以下、Fusion)は、以前に比べて実務でかなり使えるようになっています。まだ安かろう悪かろうと思っているのであれば、その情報は実はもう古いですよ、と伝えたいですね」
そう語るのは、広島県福山市を拠点にCAD/CAMの技術支援を行う株式会社モノミラの代表、山路 大介氏です。CAMメーカー出身者や現場経験豊富なエンジニアが集まる同社は、いわば加工のスペシャリスト集団。彼らがなぜ、ハイエンドCAMを運用しながらもFusionを戦略的に活用しているのか。
「かつては実務運用が厳しいと判断していた時期もありましたが、自分たちで徹底的に検証した結果、今では明確な使い分けの基準が見えています」

今回は山路氏に、モノミラという会社の成り立ちから、プロの視点で見たFusionの真価、そしてこれからの製造現場のあり方について詳しく話を伺いました。
CAD/CAM技術を核に「遊び心」を「ものづくり」に変える精鋭集団モノミラ
―まず、モノミラについて教えてください。
モノミラはCAD/CAMメーカーに勤めていた私が独立して2018年に創業しました。メインメンバーの多くがCAD/CAMメーカー出身や、加工現場でCAMを叩き込んできた人間です。そのため、やはり「CAMが一番得意」というのが私たちの原点ですね。
そこから派生して、協働ロボットを使ったバリ取り加工や3次元測定機での精密測定にも取り組んでいます。面白いところでは、CAD/CAM専用のハイスペックPCを自社で組んで提供もしています。メーカー製だと100万円を超えてしまうようなスペックでも、自分たちで水冷式のラジエーターを使い、スペックを最大限引き出せるハードを独自に組み上げることで、市場価格の3分の2から半額程度で提供しています。これが昨年だけで100台ほど売れまして、実はサーバーなんかも組んだりしているんですよ。
―技術力の高さはもちろんですが、非常にユニークな活動もされていますよね。
キーボード愛好家の社員の熱意から始まったものですが、地元の木工メーカーさんと組んで木工のキーキャップを作りました。意外と好評で、金属でもいけるのでは?とマシニングの技術を活かして今度はキーボード用のアルミ製キーキャップを製品化したところ、それだけで大きな反響と売上につながりました。

製造業の「困りごと」だけでなく「新たな挑戦」を支える高い技術力とノウハウ
こうした活動を通じて「CAD/CAMといえばモノミラ」という認知が地元の備後エリアを中心に広がっています。
―お客様からどのようなご相談があるのでしょうか?
ありがたいことにお客様から他の方が困っているから助けてあげてとご紹介をいただくことが多いです。
5軸加工機のような新しい機械を導入したけれど運用を支援してほしい、部品加工から試作に挑戦したいといったお声掛けをいただきます。
また、コロナ以降で特に多いのが「CAM担当者がいなくなってしまった」という切実な相談です。仕事はあるけれどNCプログラムが作れない。そうした際に、私たちが外からプログラマーとして支援する「NC供給」も行っています。
NCの動きを見ながら逆解析をし、過去のNCプログラムからCAD /CAMデータに起こすリバースエンジニアリング領域の支援も行えるようになりました。
自社で加工現場を持っているからこそ、リスクを引き受けて実戦的なサポートができる。それが私たちの強みだと考えています。
CAMのプロはハイエンドとFusionをどう使い分けるか

―モノミラでは、ハイエンドCAMであるTopSolidと、Fusionをどのように使い分けているのでしょうか?
それぞれの特性を理解して「ハイエンド」と「ミドルクラス」で役割を明確に分けています。
一番の境界線は、やはりシミュレーションの精度です。例えば複合旋盤。ミーリングと旋削が混在し、複数の軸が複雑に動く機械では、事前の機械シミュレーションが欠かせません。もし一度でも干渉を起こせば、主軸の精度が戻らなくなるような数百万単位の大損害につながります。
現状、Fusionはこうした複雑な旋盤機能や高度なシミュレーションにおいて、まだTopSolidのようなハイエンド機に及ばない部分があります。そのため、リスクの高い同時5軸加工 や門型機、複合旋盤の領域は、一気通貫でシミュレーションまで完結できるハイエンドCAMで固めます。
―では、Fusionが優位性を発揮するのはどのような場面ですか?
3軸の部品加工や、割り出し加工 の領域であれば、Fusionで十分対応できるため、Fusionを提案する機会も増えてきました。
10万円程の価格でCADとCAMが一つのソフトウェアで扱えるため、手戻りも楽になり効率的です。加工の直前になって図面変更や設計変更が入ることは日常茶飯事ですが、従来のCAMだとデータの作り直しに近い作業が発生していました。しかしFusionなら、モデルを修正すればツールパスも更新をかけるだけで済みます。この追従性は現場にとって大きな武器になります。
また、標準搭載されている負荷制御の機能も魅力的です。工具が斜めに追い込んでいくアプローチの挙動は、数十万円のオプション費用がかかるハイエンドCAMと比較しても優位性を感じます。
私たちは、自分たちで実際に削って検証したものしかお客様に提案しません。その検証の中で「意外とここまでできるじゃないか」と確信を持てたからこそ、自信を持って推奨しているんです。
500万円のソフトウェア1本より、人数分✕10万円のFusionで1人1CAMの環境が若手を育てる

―コスト面だけでなく、組織運営の面でもFusionの効果を感じているそうですね。
はい、入社数年の若手社員が、Fusionを使って一人で加工まで完結できるようになったんです。
1本500万円もするソフトウェアだと、できる人に与えることになってしまい、若手の成長機会が減ってしまいます。また、いままではCAM担当と現場の担当を分けて運用せざるを得ませんでした。
しかし、Fusionなら一人ひとりにライセンスを与えて、「まずは自分でやってみろ」と言えますし、CAD、CAMどちらもFusionで操作できるため一人で完結できます。
―CAMを自由に触れる環境が成長を促すと。
そうです。若手社員は感覚的に操作を覚えるのが早いですし、自分でパスを作って、機械を動かして、トライ&エラーを繰り返すことで、圧倒的にスキルが伸びます。CAM担当に修正を依頼したり作業を待つ時間もなくなり、現場全体の効率が上がりました。
いまできることを優先するのではなく、全員がCAMを使えるようになる費用対効果を考える
―Fusionの導入でボトルネックとなるのはどのようなところでしょうか?
FusionはいまのCAMでできることをそのまま使いたいといった考えで導入すると複合旋盤のようにまだ機能として不足している部分に引っかかります。
しかし、Fusionのメリットはそこではありません。経営者や管理者には、機能としては80点でも例えば若手が数名いる工場で、たった30万円の予算でCAD/CAMを3本導入できることで現場にCAMを使える技術者が増え、生産性がどれだけあがるのかに目を向けてもらいたいです。
この考え方に賛同してくださる大手加工メーカーさんも増えており、まずは3軸加工からFusionに移行して、浮いたコストを次の投資に回すという流れが生まれています。
新しいソフトウェアの導入による学習コストを心配されることもありますが、ポップアップメニューが表示されて直感的に使うことができるため、他のソフトウェアよりも使いやすく操作性の部分が壁になることは少ないため、まずはオートデスクの公式サイトで無償版をダウンロードして使ってみるのをオススメします。
製造業の困りごとに寄り添うパートナーとして
―最後に、今後の展望についてお聞かせください。
私たちは単にソフトウェアを売る会社でありたいとは思っていません。ソフトウェアの導入はあくまで入り口で、その先にある加工支援、さらには自動化やロボット活用まで、お客様とともに挑戦して成長していくようなお付き合いをしたいと考えています。 新規プロジェクトに対し、私たちのノウハウを投入して立ち上げをサポートする。こうした、自社だけでは解決できない技術的な課題を一緒に乗り越えていくことが、私たちの役割です。

―Fusionの導入を迷っている方へメッセージをお願いします。
「安かろう悪かろう」というイメージで止まってしまっているなら、それは非常にもったいないことです。適材適所で使い分ければ、これほど強力な武器はありません。
まずは一度試して、自分たちで評価してみてください。触ってみて運用や実際の加工で困った場合には、当社と応用技術社で提供しているCAD/CAM定着化支援サービスをご利用いただくことで、最短2ヶ月程度で立ち上げをお手伝いします。
新しいことに挑戦したいとき、あるいは現場の困りごとを解決したいとき、モノミラという存在を思い出していただければ嬉しいですね。

あの作業がなくなる?
切削加工を効率化する CAD/CAM自動化支援とは
これまで人手に頼っていたパス生成の事前準備から加工指示書作成までのCAD/CAM業務を一貫して自動化することで約75分の作業を10分に短縮したユースケースを紹介します。
