本記事は金型新聞掲載の「AM金型の冷却効率を自動設計で最大化!サイクルタイム短縮・成型品の反り問題を解決」からの転載です。

応用技術株式会社が展開する製造業向けデジタル支援サービス「toDIM」は、Additive Manufacturing技術(以下、「AM」)を活用した金型製作において、オートデスクの射出成形CAEソフト「Autodesk® Moldflow® Insight」を用いたソリューションを強化している。特に金型設計における冷却効率の最大化を目的にして、AM金型の製造プロセス全体の生産性向上とコストの削減を推進している。
同サービスは単なるソフトの導入支援にとどまらず、運用サポートや金属3Dプリンティング技術の支援に至るまで多岐にわたる。
AM技術の進化と金型への広がり
近年、金型の制作にも導入が進むAM技術。設計の自由度が拡大したことで、従来の切削加工では困難であった金型の製作が可能となった。だが一方で、AMによる金型製作は水管などの設計工程が複雑で時間がかかるといった課題もある。
効率的な冷却水管を自動設計
toDIMが提案する「Moldflow Insight」を活用したソリューションの最も特長的な機能は金型内部に配置する水管を、自動で最適な位置に設計する「シミュレーションドリブン機能」だ。この機能は設計時間の短縮はもとより、成形品質の向上につながる。

金型の冷却はプラスチック成形において重要な要素。冷却が均一でなければ、ヒケやソリといった欠陥が生じやすくなり、製造コストがかさんでしまう。この機能で冷却効率が向上することにより、サイクルタイムの短縮や成形不良の低減などプロセスの品質を高めることが可能となる。
冷却効率向上のためのシミュレーションにより試作コストを削減
自動設計機能のロジックとして、まずは成形サイクルにおける平均のキャビティー表面温度分布を解析し、冷却が必要な箇所や不均一な冷却が生じやすい部分を特定する。 その後、冷却管を移動し、再解析を行う。これらを繰り返し、成形サイクル時間に影響する金型表面の平均温度と成形品の変形に影響する金型表面温度のばらつきを評価基準として、水管の最適配置を設計する仕組みとなる。
例えば、温度が高くなる可能性のある箇所には、より近くに水管を配置して効率的な冷却を目指すが、金型の構造が脆くならないように距離を保った水管配置制御も併せて行う。さらに解析設定でエジェクタピンやパーティング面などの金型部品形状を定義することで、それらとの干渉も回避した水管を生成できる。

そうして出来上がった水管の形状データをCAD出力する流れとなるが、同製品は他社製のCADソフトにも対応しており柔軟な運用を可能とする。
オートデスクの梅山隆シニアソリューションエンジニアは、「他社のCAEソフトにはない自動設計機能のおかげで金型の余分な試作や修正を最小限に抑え、結果的に製造プロセス全体のコスト削減と効率化が見込める」と利点を述べる。
導入のメリット

自動設計による属人化の解消と精度の安定
自動設計機能により、作業者のスキルレベルによって差が生じていた完成度も均一化され、作業の属人化も解消する。各種設定を入力後、約48時間で水管の形状が完成するケースもあるという。
サブスクリプション方式で導入ハードルを低く
こうしたシステムソフトの利用料は、一般的に永久ライセンス制で非常に高額となるが、オートデスク製品はサブスクリプション方式が採用されているため、導入の敷居が低い。1ユーザーにつき 最大3つの解析が実施可能で、利用料は年額363万円(2024年12月時点)となっている。
また、導入を検討する事業者に対しては無料でトライアルにも応じている。

toDIMチームによる包括的なソリューションとサポート体制
応用技術はオートデスクのゴールドパートナーとして認定されており、今回紹介した「Moldflow Insight」をはじめ、CAD/CAMのソフトウェアである「Autodesk® Fusion®」など各製品を取り扱い、それらの製品群に精通したtoDIMチームの解析エンジニアによるサポート体制も整えている。
ソフトの導入支援から運用教育、設計プロセスの改善提案までユーザーを手厚くサポートするだけでなく、AM技術のコーディネーター支援も行い、技術者の養成に取り組むといったトータルなバックアップを行う。
応用技術の梅西正訓シニアマネージャーは、「まずはこの製品の良さと我々のサポート体制を知っていただき、お客様に安心して導入していただけることが伝われば」と語る。梅山氏も応用技術のサービス展開について、「製品単体の提案ではなく、その後の技術支援など、付加価値も含めた製造ソリューションを提供していただいている点はオートデスクにとっても大きい」と認める。

応用技術の梅西正訓シニアマネージャー(右)
おわりに
toDIMでは「製造技術」、「デジタル技術」、「技術支援」の3つの柱を軸にして、製造業向けにコンサルティングやプロダクト開発を行っており、今回紹介したサービスはその一環となる。
「本ソリューションに限らず、AMを活用した設計の最適化や3Dプリンティング技術の活用に課題をお持ちの方は無料の相談会も実施しているので、気軽にお問い合わせいただきたい」(梅西氏)としている。