MONOist掲載「あの作業がなくなる?切削加工を効率化するCAD/CAM自動化支援とは」

2025年4月15日
製品・サービス
Fusion

本記事はMONOist掲載「あの作業がなくなる? 切削加工を効率化するCAD/CAM自動化支援とは」からの転載です。

多品種少量生産への対応や価格競争の激化、人手不足など、製造業における業務効率化は待ったなしの状況にある。こうした中、応用技術は切削加工業界向けに新たなソリューション「Autodesk製品 CAD/CAM自動化支援サービス」の提供を開始する。これまで人手に頼っていたパス生成の事前準備から加工指示書作成までを一貫して自動化することで、現場の負担軽減と業務プロセスの大幅な効率化を図る。このソリューションが現場にもたらす変化について、詳しく話を聞いた。

 労働力の減少や技能継承、コスト高、多品種少量生産の拡大を背景に、製造業における生産性向上は喫緊の課題となっている。切削加工業界も例外ではなく、特に、世界有数の技術力を有する日本では業者間の技術力が拮抗(きっこう)し、価格競争が激化している。その結果、限られたリソースで効率的に利益を生み出すことが重要なテーマとなっている。

 こうした状況下で注目されるのが、CAD/CAM業務の効率化だ。設計と加工現場との「橋渡し」となるこの工程の効率化は、作業全体のスムーズ化や納期短縮に直結する。

 しかし現状は、加工箇所の色分けや延長面の作成など事前準備に加え、パス生成や加工指示書作成においても依然として人手に頼る部分が多い。そのため、部分的な効率化ではなく、CAD/CAM業務全体を自動化、最適化する仕組みが求められている。こうした現場の声を受け、応用技術株式会社(以下、応用技術)が新たに開発したのが「Autodesk製品 CAD/CAM自動化支援サービス」(仮称)だ。

製造業をデジタル技術で変革する

 応用技術は、1984年に設立された大阪市北区に本社を置く企業だ。「システム開発」と「技術サービス」の2つの軸で事業を展開しており、システム開発分野では、製造業向けのモノづくりソリューションなど、現場ニーズに即した業務支援ツールを提供。これにより、顧客企業の設計、生産プロセスの効率化と品質向上を支援している。

 技術サービス分野では、環境アセスメントや防災シミュレーションなど、環境、防災分野におけるエンジニアリングサービスを展開。さらに、数値解析や各種調査業務を受託し、専門的な知見を生かして社会インフラの安全性や持続可能性の向上にも貢献している。

 同社の事業領域は「建設・土木」「ものづくり」「防災・減災」「環境・まちづくり」の4分野に分かれており、特にものづくり分野では「toDIM」のブランド名の下、製造業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進している。

 具体的には、自動設計や積層造形といった新たな設計、造形技術による「プロダクト改革」と、CAMの自動化、効率化などによる「プロセス改革」の両軸で取り組み、プロセス改革の一環として、加工時に必要な延長面の作成作業を自動化するツール「Ezsurf.make(イージーサーフドットメーク)」なども開発してきた。

パス生成準備など切削加工のCAD/CAM業務を自動化

 Autodesk製品 CAD/CAM自動化支援サービスは、切削加工、特に金型や電極の加工に必要な「パス生成の前準備」「パス生成」「加工指示書の作成」という一連のプロセスを自動化するソリューションだ。

 応用技術は、オートデスクのゴールドパートナーとしてAutodesk製品の再販、コンサルティング、カスタマイズ開発、アドインツールの提供、サポートまでを幅広く手掛けており、同サービスはCAD/CAM/CAEなどの統合クラウドプラットフォーム「Autodesk Fusion」のAPI機能を活用し、応用技術が独自開発したスクリプトやモジュールを組み合わせて実現させた。Autodesk Fusionや高度なCAMソフトウェア「PowerMill」の作業において、応用技術が設定支援を行うことで、一気通貫な自動化を実現する。

 これまでオペレーターが手作業で行っていた土台作成や加工部位の色分け、延長面作成、治具の取り込みといった煩雑なモデリング作業や加工指示書の作成をまとめて自動化することで、人的工数の大幅削減や属人化の解消、作業の標準化やオペレーションミスの防止などの効果を図る。

Autodesk CAD/CAM自動化支援サービスの全体像
Autodesk CAD/CAM自動化支援サービスの全体像

 各工程における動作内容は次の通りだ。まず、前準備工程では加工部位を自動認識し、色分けや延長面の作成、治具データの取り込みといった、パス作成に向けた準備作業を自動で行う。独自スクリプトにより、これらの作業をボタン1つで完了できるのが特徴だ。

 「スクリプト連続実行」ボタンを押すことで、「土台作成」「ポケット認識」「溝認識」「面延長」「治具取込」の5つのモジュールが順次起動し、前準備工程がわずか数秒で完了する。これらは全て、あらかじめ定義されたルールに基づいて自動処理されるため、オペレーターによる個別対応は不要となる。

5つのモジュールで事前準備を自動化
5つのモジュールで事前準備を自動化

 スクリプトの実行が完了すると、パスの作成工程へと移行する。加工内容や運用環境に応じて、Autodesk FusionまたはPowerMillのいずれかを選択してパス生成に利用できる。

 Autodesk Fusionを使用する場合は、そのままマニュファクチャー環境へ移行し、PowerMillの場合はPowerMillが自動的に起動。前準備で色分けされた加工部位に対して、事前に定義されたルールに基づき最適なパスが自動生成される。なお、他社製のCAMを引き続き使用しつつ、前準備部分だけをAutodesk Fusionで自動化するといった部分導入も可能だ。

事前に定義されたルールに基づき最適なパスを自動生成
事前に定義されたルールに基づき最適なパスを自動生成

 さらに、CAMデータを元に、工程表や使用工具、加工手順などを記載した加工指示書を自動生成できる。従来一般的だった「CAM画面を見ながらExcelに手入力する」といった作業が不要となり、ヒューマンエラーの防止にもつながる。

 金型名や担当者名などCAM上で管理されていない情報については、専用マスター画面から入力、選択が可能だ。加工指示書は各社の書式やフォーマットに柔軟に対応しており、初期導入時のカスタマイズによってテンプレート内容や出力項目も自由に設定できる。

工程表や使用工具、加工手順などを記載した加工指示書を自動生成
工程表や使用工具、加工手順などを記載した加工指示書を自動生成

サブスク形式の手ごろな料金体系で自動化が可能に

 費用は、自動化パッケージ費用とCAMライセンス費用の合算となる。自動化パッケージは年間24万円(税別)のサブスクリプション形式で提供され、初年度のみ、顧客ごとの加工ルールに合わせた初期セットアップ費用(最大70万円、税別)が発生する。

 セットアップは延長面の寸法設定、加工部位ごとの色分けルール、治具データの管理方法などをカスタマイズするもので、標準的な利用開始までの期間は約2カ月を想定している。

 従業員約300人程度、売上約75億円規模の自動車/航空宇宙/鉄道向けに事業を展開する加工企業でテスト導入したところ、これまで1時間程度を要していた作業時間が、導入後は約15分まで短縮された例もあるという。

 応用技術 DX事業統括 コンサルティングサービスグループ シニアマネジャー/AMコンサルタントの梅西正訓氏は「これまで当社ではパスの自動生成など一部の自動化を進めるソリューションは提供してきましたが、実際の現場ではその前後の作業がボトルネックになっていました。今回の自動化支援サービスは、パス生成準備からパス作成、加工指示書作成までを一気通貫で自動化できることが最大の特徴です。これにより、技術者は単純作業から解放され、ノウハウの蓄積や品質改善など、より価値のある業務に専念できます」と強調する。

応用技術の梅西正訓氏
応用技術の梅西正訓氏

 オートデスク エマージングビジネス事業部 Fusionテクニカルセールス CAM担当ソリューションエンジニアの緒方輝聡氏は、同ソリューションのメリットがもたらす価値について「私たちは40年以上にわたりAutoCADなどの製品を通じて製造業のデジタル化やDX(デジタルトランスフォーメーション)を支援してきました。その中でもAutodesk Fusionは、CAD、CAM、CAE、電子設計といったさまざまな機能を備えたクラウド型のオールインワンプラットフォームです。これまで切削加工の現場では、色付けや面認識、パス出しなど、人手が不可欠な工程が多く残っていました。今回のソリューションはそうした工程まで自動化するもので、昨今の技術者不足にも応える、非常に意義がある取り組みです」と語った。

Autodesk Fusionのオープン性と、応用技術の強みで開発が実現

 Autodesk製品 CAD/CAM自動化支援サービスを実現できた大きな要因の1つは、Autodesk Fusionがオープンなプラットフォームであることだ。

応用技術の中谷誠氏
応用技術の中谷誠氏

 オートデスク マーケティング本部 アカウントベースドマーケティング マネジャーの小掠史明氏は、「私たちはAPIを広く公開しており、Autodesk Fusionはその中でも特にカスタマイズ性に優れ、今回のようにパートナー企業が自社の技術やノウハウを生かした独自のソリューションを開発しやすくなっています。Autodesk Fusionはコストパフォーマンスにも優れており、こうした自動化ツールを含めても、導入のハードルが非常に低いのも大きなポイントです」と語る。

 加えて、40年にわたるIT企業としての実績に加え、製造業出身者が多く在籍しているという応用技術独自の強みも後押しとなった。

 応用技術 DX事業統括 プロダクト開発グループ 主任の中谷誠氏は、「私たちはITの知見をベースに、製造業のリアルな課題にも向き合ってきました。現場経験を持つメンバーも多いため、単なるシステム提案ではなく、現場目線で支援できるのが特徴です。だからこそ、各社固有の加工ルールやノウハウにも柔軟に対応し、自動化に反映できます」と述べる。

形状認識と自動化の勘所はセミナーで紹介

 Autodesk製品 CAD/CAM自動化支援サービスは、2025年4月から問い合わせを受け付けている。

 「自動化について、多くの現場では『コストがかかる』『自分たちには難しい』といった声が上がります。そのため、誰でも導入しやすいサービスの提供を目指してきました。今回の自動化支援サービスは、Autodesk FusionのようなCAD/CAMと組み合わせることで、従来に比べてはるかに手頃なコストで導入できるのが大きな特徴です」(中谷氏)

 「今回の自動化支援サービスで実現したかったのは、現場の方々が本来注力すべき『技術力の向上』や『ノウハウの蓄積』に集中できる環境づくりです。誰にでもできる単純作業はITの力で自動化し、人はより創造的で高付加価値な業務に取り組むべきです。それが企業の強みとなり、競争力の向上にもつながるはずです」(梅西氏)

 切削加工現場が直面する課題は多岐にわたる。これに対し、Autodesk製品CAD/CAM自動化支援サービスは、一連の工程を自動化することで、作業負担の軽減にとどまらず、属人化の解消やミス防止、ノウハウの蓄積にも寄与する。

 同サービスの詳細は、2025年4月22日(同日以降は見逃し配信を公開)に応用技術が開催するセミナーで紹介される予定だ。興味のある方はぜひ参加し、現場の効率化に役立ててほしい。

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